for Organizations

企業、行政の担当者の方へ

マタニティにまつわる現状

私たちを取り巻くマタニティの現状を考察し、
世の中の課題と私たちの悩みはどうつながっているのかを紐解く

  • 出生率*:1.42人(2018年)*女性が一生のうちに産む子どもの数
  • 出生数 :86.4万人(2019年)過去最少

社会全体にとって少子化は課題とされています。そして、この数字にもみられるように、女性が出産する回数が少ないため、妊娠経験が自他ともに少なくなっているのが現状です。親の世代は1家族に2、3人の子供がいたり、祖父祖母世代との同居も今以上にあったので、子育ての「育てあい」が可能でした。現在は核家族で1人か2人の子供を育てることが多く、子育ての経験も相談する相手も少なくなっていると言えます。

人生で起きていることと仕事のパフォーマンスは密接につながっています。ワークとライフが切り離せないことが世の中の共通理解となる中で、いかにこの2つをブレンドし、相乗効果を生むかが組織や社会にとって喫緊の課題となっています。組織や社会での活躍が期待されるマタニティ期の女性の活躍にとっては、出産や子育てを通じた悩みを乗り越えること、そして望むキャリアや期待されるマネジメント的な役割に踏み出すことで、飛躍していくことも期待されています。

子育て世代の働く女性が増加

平成20年と30年を比較すると30代を中心とした働く女性は10%ほど増加している(「平成30年度版働く女性の実情」:厚生労働省)
これは昭和51年と比較すると30%ほど増加の傾向(内閣府男女共同参画局HP)

30歳代で働く女性は増加しています。また、初婚年齢が約30歳であることから、30歳代で妊娠出産をする人が増えています。20代で積み上げてきたキャリアの継続、子育ての費用や家計を女性が支えることも期待されている今、マタニティ期における「仕事」と「妊娠、出産、育児」との両立が課題となっています。また、30代、40代での妊娠出産が増えることで不妊治療や高齢出産にまつわるリスクなど、困難な状況を抱える方も少なくありません。

女性の活躍推進(日本再興戦略改訂2014:首相官邸より)

目標値
2020年、女性就業率(25歳から44歳)を73%に
実数
2013年度は69.5%、2019年は約78%(労働力調査より)
目標値
2020年、指導的地位に占める女性の割合を30%に
実数
2013年女性管理職比率は7.5%、2018年では12%(ILO発表)

この数字を見るとマタニティ期の女性の就業率は目標を上回っている一方で、指導的な地位に就く女性の割合は目標値の半分にも満たない現状があります。

このように社会の中で女性が働き、企業の中でもマネジメント的な役割を担うことが期待されています。マネジメントの役割につくのは会社にもよりますが、30歳代であることを考えると、マタニティ期に重なり、妊娠・出産によるキャリアの分断やキャリアダウンが切実な課題になるわけです。そして産休や育休からいつ復帰するのか、出産後にどんな働き方をするのかは、マタニティ期の女性にとっては大きな選択になってきます。子育ての大変さから昇進を躊躇したり、独身時代や結婚していたとしても子供のいなかったときには可能だった仕事がままならないことへの葛藤などが、この数字には現れています。

30代40代の働く女性を支援する「キャリアリープ・メンタリング」
※クライアントさんの声を掲載しています。

このように、マタニティ期の女性がプレッシャーに感じたり、モヤモヤを感じるには十分な事情が社会的にも存在しています。この社会的な背景を個人に引き寄せると、その課題は大きく次の3つに集約されます。

3つの課題

  1. 仕事と育児の両立をどう成り立たせるのか?
  2. 出産後のキャリアをどうするのか?
  3. 子供を持つのか?すでに子供がいるとして、「もう一人、もう二人」の出産をどうするのか?

マタニティリープは、マタニティ期の悩みや課題を飛躍につなげていきます。そのスタンスに立ってこれらの課題を捉えたとき、これらの問いはどんな契機になるのでしょう?これは個人にとっても大事なテーマであるだけではなく、社会にとっても大事なテーマなのです。それを支える組織や行政にとって、こうした個人的&社会的な悩みを力にすることができたら、どれだけの喜びと力になることでしょう。マタニティリープは社会の大きな文脈としてこのコンセプトを発信し、組織や社会での実践に寄与します。

マタニティ期に向けた企業や行政の取り組み

すでにあるサポート

仕事と育児の両立をどう成り立たせるのか?出産後のキャリアをどうするのか?という問いについては、企業で取り組まれている施策は多いのではないでしょうか。例えば、産休や育休の取得、時短労働、在宅勤務、ワークシェアリング、企業内保育所などの取組があげられます。また、マタニティ期のサポートよりもさらに大きな「ダイバーシティ」や「インクルージョン」の文脈から、研修やワークショップ、メンター制度などを提供し、女性の活躍を支援している企業もあります。

また行政の施策としては、保育の無償化、産前産後の検診の提供やケアセンターの設立、子育て世代が受け取れるお得なサービスや児童手当といった金銭的なサポートなどもあげられるほか、行政主催のイベントや講演会などもよく見かけます。妊娠出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビなど、行政や市町村を主体としたポータルサイトやアプリも充実してきています。

ソフト面のサポートが必須

企業の労働時間や、働く場所、処遇に対応した取り組み、行政の事業や制度といった仕組がハード的なサポートだとすると、今後さらに必要になるのはソフト面でのサポートです。

ソフト面でのサポートとは、マタニティリープの(妊娠出産育児を通じて人が成長し、チャレンジできる)企業文化や風土がいかに醸成できるかにつきます。労働人口が減っていく中、女性の活躍が日本にとっては欠かせないという事情もさることながら、仕事と育児を通じて、いかにその人が持つユニークな個性や才能を発揮し、チャレンジができ、成長を実感できるかということに主眼が置かれるべきなのです。

具体的な方法としては、企業内では1on1といった仕組みがあるところもあります。これは継続的に行われる部下の成長支援を目的とした上司との面談です。イクメンやイクボスといった言葉もあるように、上司自身に子供がいたり出産経験があることで、マタニティ期の悩みにも理解が深まるようです。また、利害関係のある上司ではなく、外部のメンターによるメンタリングやマタニティ期の方々へのワークショップの提供なども考えられます。

深いテーマから本音の力を引き出す

メンタリングやワークショップの機会では「子供を持つのか?すでに子供がいるとして、もう一人、もう二人の出産をどうするのか?」のような繊細なテーマについても深めていくことが可能となります。行政が行うイベントや講演会などもソフト面の啓蒙となりますが、話を聞いたり情報を受け取るだけではなかなか個人の変化につながりません。

個人が安心して自分のことが話せて、聞いてもらえるワークショップ形式の良いところは、自分自身の話ができるだけではなく、他の人の話も聞くことができるので、知恵も共有できますし、励まされます。また、単発ではなく、定期的にワークショップを開催することで、そのワークショップで話したことや経験したことを日常に活かすことができますし、日々の気づきからまた新たな行動につなげることで、変化を生み出すことが可能となります。